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2010.04.03

野中広務と辛淑玉の「差別と日本人」を読んだ

 野中広務という人は、自民党の中で異色の存在だとは思っていた。ただの保守的な政治家とはスタンスが違う。弱い人や貧しい人への配慮が感じられる。それがどのような流れの中で出てきたものなのか、この本で初めてわかった。

 部落の存在は、東京で育った私にはあまりなじみがない。それでもいくつか話を聞いたことがある。例えば、住んでいるところで、あの人は部落の出身だという噂を聞いた。高校生の頃だったので、その存在は知っていたが、それだからどうとは思わなかった。

 大学の時、同じクラブの大阪出身の女の子が、私は部落の人とは結婚しないなどといっていたのにビックリした。そんなヤツとはつきあえないと思ったのを覚えている。

 私には理解できなかった。部落の人と私たちと何が違うのかわからなかった。そしてそれは今でもわからない。差別したい人は理由はいろいろつける。外国人だから、障害があるから、病気だから、教育レベルが低いから、女だから、足が短いから、どこか人と違うから・・・。結局何でもいいんだ。

 相対的に弱い立場の人を下に置き、自分を優位な位置に立たせる。これで威張っている人こそ、人間として存在意義が問われる。弱い立場の人、苦しい立場の人を助けることは、当たり前。自分もいつかはそういう時期がくる。歳をとれば、みんな弱くなる。差別をしている人たちは、そんなとき、自分をどう見るのだろうか。多くの人に助けてもらわなければならない存在になった自分をどう見るのだろうか。あなたも、私も、また弱い存在なのだ。

 朝鮮人としての辛淑玉の体験もまた悲しいものだった。頑張れば頑張るほど、家族を苦しめてしまう自分の存在のあり方。懸命に差別と戦うことの大切さは痛感しながら、それが自分以外の人にはねかえっていく。同じ仲間からも嫌われたり、遠ざけられてしまう体験は本当に悲しい。これは野中広務にも共通した体験。かれもまた家族を巻き込んだことに苦しんでいる。あれだけ頑張ったのに、未だに孤独な存在の自分を共に悲しい眼で見つめている。

 差別は今の世界にも蔓延している。インドのカースト制度、南アフリカのアパルトヘイト、ユダヤとパレスチナ、ロシアのチェチェン問題、クルド人問題、ジプシーといわれたロマ人、チベット問題、イスラムの問題、貧困問題、男女差別の問題、あげていけば切りはない。優位な立場にたつものは、差別することに痛みはない。心地よささえ感じている。この本の中で「享楽」という言葉で表現されているように、差別は一つの快楽なのだ。

 この本の中には、差別と雄々しく戦い、そして苦しみ、今でも悲しみの中でもがき続けている魂がある。自分の人生とはいったい何だったのか叫び続けている魂がある。なぜ、40万部近くも売れたのか理解できる。

 最終章に出てくる自民党の代議士たちへの論評は、野中広務でなければ言えない迫力を持って迫ってくる。二人による後書きも、興味深い。ぜひ、一読をお勧めする。

 野中広務という人は、権力によって体よく使われたのだとも思った。彼は頑張った。でも差別は残った。乗り越えるためには、次の世代の私たちが、差別をするような「ひ弱な文化」を引き継がなければいいのだ。一人一人がそのように生きれば、差別は次第に姿を変える。

 朝鮮人への差別は私たちの子どもの頃に比べると全く違ったものになった。韓国の人々は学校で本名を名乗り、野球界やサッカー界、芸能界で活躍している。部落の出身を名乗り、芸能界で活躍する人も出てきた。差別は連綿として残っている。でも、変化はしている。

 いいのだ。いわせる人には言わせればいい。野中広務、辛淑玉の両氏、あなた方の悲しみ、苦しみの一部でしかないけれど、理解した人たちはいるのだと思います。差別された事への怒り、悲しみ、苦しみを、少しでも自分のものとして感じた人はいると思います。

 孤独な戦いに敬意を表しますが、あなた方は一人ではなかったはずだ。私も私の力の範囲で差別する人たちと戦います。自分の中の差別意識と戦います。お願いだから、あなた方の戦いが無駄だったとは思わないで欲しいのです。


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